
英語を学んでいると、ときどき「え、これどういう意味?」と脳がフリーズする表現に出会うことはよくありますよね。 今回の主役は it went over big。 初見では「大きく上を通り過ぎた?」みたいな、謎の物理現象にしか見えません。
この表現に出会ったのは、昨日のブログ “a total departure from:永遠の別れ?いいえ違いました。” の続きで、The Asahi Shimbun・“Ex-news reporter finds his purpose in life at 59 as a Buddhist monk” を読んでいた時のことでした。
この記事を書いている記者さんが30年ぶりに新聞社の同期と再会します。
その30年の間にその同期、かつての記者仲間のトダさんは僧侶になっていました。
話は30年以上前、初めて会った頃に戻ります。
そしてそこに今日の勉強がありました。
it was his performance as a fire breather that made him famous, or infamous, in our company. He demonstrated fire spitting, a trick he learned in college, at a new hire training retreat. It went over big.
直訳してみましょう。 「彼を我が社で有名(あるいは悪名高き存在)にしたのは、火吹き男としてのパフォーマンスだった。彼は大学時代に覚えた技である『火吹き』を新入社員研修の合宿で披露した。それは大きな上に超えて行った。」
……ん? “It went over big.”
「大きな上に超えて行った」? 火を吹きすぎて、研修施設の天井を超えて火災報知器でも鳴らしたのでしょうか。
それはマサカとは思いますが、気になりすぎて私の頭が「火を吹き」そうなので、この表現の正体を徹底的に調べてみることにしました。
1. 犯人は “go over” だった
まず疑うべきは、動詞句の “go over” です。
高校英語の参考書を引っ張り出すと、“go over” には以下のような意味が載っています。
- 〜をよく調べる、復習する(Let’s go over the plan.)
- 〜へ渡る、行く(Go over to that side.)
しかし、今回の文脈にこれを当てはめると「それは大きく復習された」となり、意味が通りません。火を吹く新入社員をみんなで復習する研修……狂気の沙汰です。
さらに辞書を深く掘り進めていくと、“go over” の第3の意味を発見しました。
- go over:(提案・パフォーマンス・スピーチなどが)〜な反応を得る、受け入れられる
例えば
- How did my idea go over? → 私のアイデアはどう受け取られた?
つまり、上の 2 番の意味のチョット応用で、「伝えたいことが話し手と聞き手の間を進んでいく、渡っていく」そんなイメージなんですね。
さらに後ろにくる形容詞や副詞をつけることによって「どのように伝わったのか」「どんな反応を得たか」が決まる仕組みになっています。
- go over well = 好評を得る、ウケが良い
- go over badly = 評判が悪い、スベる
なるほど、パズルのピースが繋がり始めてきました。
2. “big” が合体するとどうなる?
では、問題の “go over big” です。
“well” の代わりに “big” が入っています。 英語の口語(カジュアルな表現)では、“big” は「大盛況で」「大成功で」という副詞的なニュアンスで使われることがあります。
例文:
- He finally hit big with his latest album. 彼は最新アルバムでついに大成功を収めた。
- She moved to New York hoping to make it big as an actress. 彼女は女優として大成功することを夢見てニューヨークに移った。
芸能・ビジネス・スポーツなどでよく使われるそうです。
したがって、“go over big” の正確な意味は……
「大ウケする」「大成功を収める」「大評判になる」
でした!
先ほどの火吹き男の文章に戻ってみましょう。
“It was his performance as a fire breather that made him famous, or infamous, in our company. He demonstrated fire spitting, a trick he learned in college, at a new hire training retreat. It went over big.”
【意訳】 「彼を社内で有名人(あるいは危険人物)にしたのは、火吹きとしてのパフォーマンスだった。彼は新入社員研修の合宿で、大学時代に身につけた『火吹き』の技を披露したのだ。これが、めちゃくちゃ大ウケした。」
謎は解けました。彼は施設をボヤ騒ぎに巻き込んだわけではなく、新入社員たちの心を鷲掴みにし、研修の場を爆笑と感銘の渦に巻き込んだのです。
3. 実生活で使える! “go over big” の例文集
せっかくなので、この「大ウケ」「大成功」を表す “go over big” を日常やビジネス(カジュアルな会話)で使えるように、いくつか例文を作ってみました。
① プレゼンや提案が大成功したとき
- “My proposal went over big with the board of directors.” (私の提案は取締役会で大好評だった。)
つい “It was successful.” と堅苦しく言いがちですが、“It went over big!” と言うと「会場が沸いた感」が一気に伝わります。
② ジョークやスピーチで会場を爆笑させたとき
- “His joke didn’t seem funny to me, but it went over big with the audience.” (彼のジョーク、私には何が面白いのかわからなかったけど、観客には大ウケしていたよ。)
③ プレゼンやスピーチでなくたって
- “I was worried about the birthday gift, but it went over big with my girlfriend.” (誕生日プレゼント、気に入ってもらえるか心配だったけど、彼女に大好評だった!)
- “The homemade pizza went over big at the party.” (手作りピザがパーティーで大人気だった。)
4. 逆に「大スベリした」と言いたいときは?
英語学習者たるもの、ポジティブな表現を覚えたらネガティブな裏返し表現もセットで押さえておきたいところです。
① “go over like a lead balloon” (鉛の風船のように沈む = サンザンな結果になる)
英語には “go over like a lead balloon”(鉛でできた風船のように飛んでいく)という、最高に皮肉の効いた慣用句がありました。重すぎて飛ぶはずもない鉛の風船……つまり「大スベリする」「全く受け入れられない」という意味です。
- “His fire spitting performance went over like a lead balloon.” (彼の火吹きパフォーマンスは、見事なまでに大スベリした。)
② “go over poorly / badly” (評判が悪い)
シンプルに言うならこちらです。
- “The joke went over poorly.” (そのジョークは滑った。)
もし研修での火吹きが “went over like a lead balloon” だったら、彼は「悪名高き存在(infamous)」にしかなれなかったでしょう。“went over big” だったからこそ、社内のレジェンドになれたわけです。
謎が無事解け、頭が火を吹かずに済みました。
次回はこの記事の先を読み進めます。
どんな”?”が待っているのでしょうか?
今日もお付き合いいただきありがとうございました。
Don’t forget to come back on Monday.