
日本語に様々方言があるように、中国語にもライトなモノからヘビーなモノまで多くの方言があるようです。
今年中国で公開された映画 “Dear You” 、ほとんどの中国人が字幕なしでは理解できないほどの中国南部の方言でほぼ撮影されたのですが、なんと中国で今年一番売れた映画になりました。
何だか面白そうなので、今日は The Asahi Shimbun・“Chinese film shot in dialect is finding a global audience” を読んでいきます。
これは母国の家族を養うため仕事を求めタイのバンコクにやって来た中国人出稼ぎ労働者たちの物語。
続くこの映画のレヴューに今日の勉強がありました。
The film provides a glimpse into the centuries-long history of Chinese migration to Southeast Asia.
「この映画は、東南アジアへの中国人移住の数世紀にわたる歴史を垣間見せている。」
It has succeeded in making this little-discussed history visible to a wider audience, threading the fine needle of passing official censorship requirements, experts say, while telling a compelling story.
“thread” は「糸」や「SNSのスレッド」ですよね、動詞にもなるとは知りませんでした。
それと “fine”、「素晴らしい」でいいんですか?
今日はこのクエスチョンマーク2個を掘り下げていきます。
動詞の “thread” —— えっ、君、動詞になれたの?
まず引っかかったのが “threading” です。
「名詞の thread に -ing がついてるってことは……君、動詞なの? いつから?」
調べてみると、動詞の thread には以下のような意味があることが判明しました。
- (針などに)糸を通す
- (狭い場所や人混みを)ぬうように進む
- (ビーズなどに)糸を通す、つなぐ
なるほど! 「糸を通す」という動作そのものが動詞になっているわけです。
例えば、こんな風に使います。
例文1(物理的な「糸を通す」)
She tried to thread the needle, but her eyes were too tired. (彼女は針に糸を通そうとしたが、目が疲れすぎていた。)
例文2(人混みや狭い場所をぬう)
The taxi threaded its way through the heavy traffic. (タクシーは渋滞の中をぬうように走った。)
人混みを「縫うように進む」という日本語の表現がありますが、英語でもまったく同じ感覚なんですね。これはちょっと感動的です。
“fine” —— 「元気です」以外の顔を持つ男
次に気になったのが “fine” です。
fine といえば、中学校の最初に習うあいつです。 “How are you?” “I’m fine, thank you!”
「元気な針」……? 「すばらしい針」……?
いやいや、針が元気って何でしょうか。
ここでもう一度辞書を深く掘り下げてみました。すると、fine には僕たちが普段使っている「良い、元気な」以外に、非常に重要な意味があったのです。
- 細い、極小の
- 精密な、精巧な
- 細かい
パッと見は関係なさそうですが、「良い」にしろ「細かい」にしろ「質が高い」というfine の根っこにあるニュアンスから生まれた意味だそうです。
話を戻すと、fine needle とは「すごく細い針」、ひいては「穴(耳)がめちゃくちゃ小さい針」という意味だったのです!
例文3(「細い」という意味の fine)
He has very fine hair, so it breaks easily. (彼はとても細い髪質なので、切れやすい。)
例文4(「細かい」という意味の fine)
Grind the coffee beans into a fine powder. (コーヒー豆を細かく粉状に挽いてください。)
「細い髪」や「細かい粉」も fine なのですね。 これで「元気な針」という不気味なイメージは払拭されました。
3. 合体! “thread the fine needle” の真意とは?
さて、パーツは出揃いました。
- thread = 〜をスッと通す
- fine needle = 穴が超絶小さくて細い針
穴が極小の針に、毛羽立った糸を通す場面を想像してみてください。
呼吸を止め、目を凝らし、集中力を極限まで高めて……あ、ちょっと逸れた! 糸先をペロッと舐めてもう一回……くっ、また引っかかった!
そう、これは「極めて困難で、わずかな狂いも許されないきわどい状況を乗り切る」「非常に難しい舵取りを成功させる」という比喩(慣用句)だったのです!
一般的には “thread the needle” という形でよく使われますが、今回の記事ではさらに難易度を強調するために “fine(超極細の)” という形容詞がトッピングされていたわけです。
あらためて、冒頭のニュースの文脈に当てはめてみましょう。
「公式な検閲基準をパスしつつ、同時に面白いストーリーを伝える」という行為。
検閲に寄りすぎれば退屈で嘘くさい作品になり、ストーリー性を追求しすぎれば検閲に引っかかって公開禁止になる……。まさに「あっちを立てればこちらが立たぬ」という超絶ギリギリの綱渡りです。
記事の筆者は、この絶妙なバランス感覚を「超極細の針穴に糸を通すようなものだ」と表現していたのですね!
なんと素晴らしい比喩表現でしょう。
4. 日常でも使いたい! “thread the needle” の例文集
せっかくなので、僕たちが日常で使えそうな例文を作ってみました。
例文5(ビジネスで)
Balancing a low budget with high customer expectations is like threading a needle, but we managed to do it. (低予算と高い顧客志向の両立はまさに至難の業だったが、なんとかやり遂げた。)
例文6
She’s threading the needle of looking busy without actually doing any work. (実際には何もしていないのに忙しそうに見せるという高度なバランスを取っている。)
例文7
I’m threading the needle of staying awake in the meeting while looking like I’m deeply focused. (会議で寝ないようにしつつ、深く集中しているように見せるという繊細な技を使っている。)
今日はなんだか随分洒落たイディオムを勉強出来ました、では今日の訳です。
It has succeeded in making this little-discussed history visible to a wider audience, threading the fine needle of passing official censorship requirements, experts say, while telling a compelling story.
「専門家によれば、この作品は、ほとんど語られてこなかった歴史をより広い層に可視化することに成功しており、説得力ある物語を語りながら、公式の検閲基準を巧みにすり抜けるという難しい課題を見事にやってのけている。」
今日もお付き合いいただきありがとうございました。
Don’t forget to come back on Monday.